Full House / Wes Montgomery

マイルス・デイビス・バンドの黄金のリズム隊をバックに熱い熱いジャズを聴かせてくれるウェス・モンゴメリーのライブ録音アルバム


フル・ハウス+3

ウェス・モンゴメリーの親指奏法は有名です。ギターは一般的にピックで演奏しますがウェス・モンゴメリーはピックを使わずもっぱら親指で演奏しました。

プロのミュージシャンになる前、昼間は一般の仕事をしていましたからギターの練習は夜や夜中でした。そのため近所迷惑にならないように静かに練習しなければいけませんでした。そこで考えたのがピックを使わず親指で弾く奏法です。それが個性になりウェス・モンゴメリーの演奏スタイルになりました。

 

ウェス・モンゴメリーがギターの練習を始めたのは20歳からだそうです。プロのミュージシャンとしては楽器を始めるのがかなり遅かったんですね。

25歳でプロのギタリストになり仕事を始めてからも工場での仕事は辞められませんでした。8人の家族を養わなければならなったからです。

朝7時から夕方まで工場で働き、家に帰ってギターの練習をして夜はバンドの仕事に出かけるというハードな毎日だったようです。

彼は家族思いで働き者だったんですね。よくジャズミュージシャンにありがちな酒と女と麻薬みたいな悪癖とは無縁だったようです。

 

ウェス・モンゴメリーは1948年にライオネル・ハンプトン楽団に入ってプロのギタリストになります。2年間のツアー生活を終えて故郷のインディアナポリスに戻って来ます。そして1968年に45歳の若さで亡くなるまで故郷のインディアナポリスで暮らしました。死因は心臓発作だったそうです。

 

ギタリストとしての活動はわずか20年間でしたが数多くのアルバムを発表し多くのギタリストやミュージシャンに大きな影響を与えました。

 

1966年に「夢のカリフォルニア」というアルバムを出してからはイージーリスニング音楽に路線を変更しました。イージーリスニング音楽に路線変更する前はゴリゴリのモダンジャズでしたからこの路線変更にはファンの間で賛否両論ありました。

私は両方とも素晴らしいと思います。ジャンルが変わってもウェス・モンゴメリーのギターの演奏スタイルはやはりジャズです。

 

まさにこのアルバム「フルハウス」はどっぷりジャズの時代の代表アルバムですね。

ゴリゴリのモダンジャズファンにとってはウェス・モンゴメリーの路線変更は裏切られたような気持ちになったのかもしれませんね。

しかし路線変更した後もウェス・モンゴメリーの人気が落ちることはありませんでした。

ジャンルを超えてウェス・モンゴメリーのギターを多くの人が支持しました。やはりウェス・モンゴメリーのギターには魅力があるということなんでしょうね。

 

このアルバム「フルハウス」はカリフォルニア州バークリーにある「Tubo(ツボ)」というライブハウスでのライブ録音です。観客の熱い声援に臨場感があってその場にいるような気持ちにさせてくれます。

 

メンバーはテナー・サックスのジョニー・グリフィン、ピアノはウィントン・ケリー、ベースはポール・チェンバース、ドラムはジミー・コブと超豪華メンバーです。

特にピアノ・ベース・ドラムのリズム隊は当時現役のマイルス・デイビスのレギュラートリオです。凄い演奏になるに決まってます。

熱い熱いおすすめのアルバムです、ぜひ聴いてみてください。

 

演奏曲目

1. Full House
2. I've Grown Accustomed To Her Face
3. Blue 'N' Boogie
4. Cariba
5. Come Rain Or Come Shine (Take 1)
6. Come Rain Or Come Shine (Take 2)
7. S.O.S. (Take 3)
8. S.O.S. (Take 2)
9. Born To Be Blue

 

[ Recorded Live at Tubo,Berkeley 1962 Riverside Records]

 

演奏メンバー

Wes Montgomery(Gugtar)

Johnny Griffin(T.Sax)

Wynton Kelly(Piano)

Paul Chambers(Bass)

Jimmy Cobb(Drum)

 

まさにこのアルバムは元気のでる最高のジャズ名盤の一枚です!

 

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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Chet Baker Sings / Chet Baker

若き25歳のチェット・ベイカーの自然体で透明な歌とトランペットに心が軽くなります


Chet Baker Sings

チェット・ベイカーが歌手としてレコーディングすると言った時はレコード会社も評論家も誰もが反対したそうです。みんなチェット・ベイカーの歌を聴いたことがあったので、音程の悪さや歌唱力のなさや抑揚のない歌い方をみんな知っていましたので。

案の定レコーディングではNGテイクを100回以上も出すほどの大苦戦だったようです。

ところが聴衆の評価は違いました。大方の予想に反して発売した途端に売れに売れました。

それがこのアルバム「チェット・ベイカー・シングス」です。

何故でしょう、チェット・ベイカーの歌声には心の琴線に触れるものがあります。誰の心の中にでもある憂いや弱みや喜びや苦しみや楽しみやそんないろいろな人の思いが透明な歌声に乗って聴き手の心の中にスッと入ってきます。スッと入ってきたらそれは受け止めるしかないですね。そうすると何故だか心が軽くなっている自分に気がつくはずです。不思議な魔法のような歌声です。

 

そして自然体で飾りけのないチェット・ベイカーのトランペットがまた素晴らしく心洗われます。

 

まだ25歳の若いチェット・ベイカーのトランペットと歌が存分に楽しめるアルバム、おすすめの1枚です。

ぜひ聴いてみてください。

 

このアルバムはまさに元気の出る最高のジャズ名盤の一枚です。

 

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曲目

1.That Old Feeling 
2.It’s Always You 
3.Like Someone In Love
4.My Ideal
5.I’ve Never Been In Love Before
6.My Buddy
7.But Not For Me

8.Time After Time
9.I Get Along Without You Very Well
10.My Funny Valentine
11.There Will Never Be Another You
12.The Thrill Is Gone
13.I Fall In Love Too Easily
14.Look For The Silver Lining

 

[ Recording 1954 & 1956   Pacific Jazz ]

 

演奏メンバー

Chet Baker (Vocals & Trumpet)
Russ Freeman (Piano & Celesta )
James Bond (Bass) (track 1-6)
Carson Smith (Bass) (track 7-14)
Peter Littman (Drum ) (track 1,2,5)
Larance Marable (Drum) (track 3,4,6)
Bob Neal (Drum) (track 7-14)

 

最後まで読んでいただきありがとうございます!  

Supertrios / McCoy Tyner 

超激しい2つのスーパートリオが満喫できる贅沢なマッコイ・タイナーのアルバムです


Supertrios

 

マッコイ・タイナーは言わずも知れたジョン・コルトレーン・バンドの黄金トリオのピアニストです。ドラムのエルビン・ジョーンズとベースのジミー・ギャリソンと共にコルトレーンの黄金時代を支えました。

コルトレーンのバンドには21歳になる1960年から5年の間在籍し、「至上の愛」や「アセンション」など数々の名盤に参加しています。

 

1965年に音楽性の違いからコルトレーンのバンドを退団してからは自分のリーダーアルバムも多数発表し、精力的に活動します。1967年に発表した「ザ・リアル・マッコイ」は有名ですね。

 

このアルバム「スーパートリオズ」は1977年のマッコイ・タイナーが38歳の時のアルバムですのでかなり成熟したタイナーのピアノが聴けます。

成熟したといっても若い頃のパワフルさは少しも衰えず、力強いピアノタッチも健在というか益々磨きがかかったといえるかもしれませんね。

 

題名にSupertriosと複数形の"S"がついています。これはスーパートリオ達という意味ですがこのアルバムには2つのスーパートリオが出てきます。

1つは

マッコイ・タイナー(ピアノ)

ロン・カーター(ベース)

トニー・ウィリアムス(ドラム)

です。

ロン・カータートニー・ウィリアムスは60年代のマイルス・デイビス・バンドを支えた強力なリズム隊です。2人にとってこのアルバムが録音された1977年頃はハンク・ジョーンズ(Piano)とのグレート・ジャズ・トリオや、フレディ・ハーバード(Tp)やハービー・ハンコック(Piano)らと結成したV.S.O.Pクインテットなどで大活躍だった時期です。そんな大忙しの寸暇を割いての録音だったんですね。

 

もう一つのトリオは

マッコイ・タイナー(ピアノ)

エディ・ゴメス (ベース)

ジャック・ディジヨネット(ドラム)

のトリオです。

ベースのエディ・ゴメスはこの録音の1977年頃は10年間いたビル・エバンス・トリオを脱退した頃になりますね。1980年代以降はドラムのスティーブ・ガッドに誘われててチック・コリアのバンドに加入しその後ステップス・ア・ヘッドなどフュージョン系の世界で大活躍します。

ジャック・ディジョネットは1968年にトニー・ウイリアムスの後がまとしてマイルス・デイビスのバンドに加入しマイルス・デイビスのエレクトリック・サウンドに貢献します。このアルバムを録音した1977年頃は、ギターのジョン・アバークロンビーとベースのデイブ・ホーランドとのギタートリオ "Getway"を結成し活躍していた頃です。この後ジャック・ディジョネットキース・ジャレットのスタンダード・トリオの一員として活躍することになります。

 

このアルバム"Supertrios "はアナログLP版では2枚組として発売されました。

1枚目がマッコイ・タイナー(ピアノ)、ロン・カーター (ベース)、トニー・ウィリアムス(ドラム)のトリオです。

そして2枚目がマッコイ・タイナー(ピアノ)、エディ・ゴメス (ベース)、ジャック・ディジヨネット(ドラム)のトリオです。

 

CDでは1曲目から6曲目がマッコイ・タイナー(ピアノ)、ロン・カーター (ベース)、トニー・ウィリアムス(ドラム)のトリオで、7曲目から12曲目が マッコイ・タイナー(ピアノ)、エディ・ゴメス (ベース)、ジャック・ディジヨネット(ドラム)のトリオになります。

 

おそらく発売当時、2枚組でジャズのレコードを発売することはかなり異例のことだったのではないでしょうか。そでだけマッコイ・タイナーがレコード会社から一目おかれていたということですね。

 

ロン・カーター (ベース)、トニー・ウィリアムス(ドラム)とのトリオの1曲目Wave(波)。カルロス・ジョビンが作った美しく軽快なボサノバですが、この3人の手にかかるとこんなにも激しく荒々しいWAVE(波)になってしまいます、凄い!

そして3曲目の I Mean Youはピアノとドラムとのデュオです。マッコイ・タイナーとトニー・ウイリアムスの2人の壮絶なバトルが聴けます。もちろんバトルといっても戦いではありません。何だか高尚な会話のようにも聴こえます。子供に帰った2人のやんちゃな楽しい遊びのようにも聴こえます。楽しそう!

そして何といっても圧巻は6曲目の Moment's Noticeでしょう。このジョン・コルトレーンの難解な曲をこの3人はスラスラと料理していきます。まさに天才トリオです、素晴らしい!

 

7曲目からのエディ・ゴメス とジャック・ディジヨネットとのトリオも凄いです。

1番のオススメはやはり10曲目のStella By Starlightでしょうか。

静かにピアノのソロから始まりそしてベースのパターンが入ってきます。その合間を縫ってドラムが飾ります。美しいテーマが始まると3人は優しく優しく包み込むように演奏します。大切な宝物のように。どんなにプログレッシブになってもどんなに激しく展開していっても曲を大切に大切にします。当たり前ですがこの美しい曲をぶち壊したりしません。何と素晴らしい演奏でしょうか。最後はまたベースのパターンへと戻って静かに終わります。

ぜひ聴いてみてください。

 

まさにこのアルバムは元気のでる極上のジャズの名盤といえるでしょう!

 

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曲目

1. Wave

2. Blues On The Corner

3. I Mean You

4. The Greeting

5. Prelude To A Kiss

6. Moment's Notice

7. Hymn-Song

8. Consensus

9. Four By Five

10. Stella By Starlight

11. Lush Life

12. Blues For Ball

 

[ Recording 1977 Milestones Record ]

 

演奏メンバー

McCoy Tyner (Piano)

Ron Carter (Bass) (track1〜6)

Eddie Gomez (Bass) (track1〜6)

Tony Williams (Drum) (track7〜12)

Jack DeJohnette (Drum) (track7〜12)

最後まで読んでいただきありがとうございました。

Afro-Cuban / Kenny Dorham

熱い熱いアフロキューバンのリズムが体感できるケニー・ドーハムの熱い熱いアルバムです


Afro-Cuban (Rudy Van Gelder Edition)

1980年代、イギリスで ”クラブジャズ”なるものが流行りました。

今までジャズといえばライブにしろレコードにしろじっと聴く芸術でした。しかしジャズで踊ろうというムーブメントが起こります。それがクラブジャズ。その後その流れがアシッド・ジャズへとつながっていきます。

この動きにブルーノート・レコードが乗っかったこともあり。50年代・60年代のジャズが新しく息を吹き返します。その英国のクラブジャズの世界で真っ先に取り上げられたのがこのケニー・ドーハムの ” アフロ・キューバン”でありとりわけ1曲目のAfrodisiaです。

まさに踊りたくなるというかじっとしていられない、体が自然と動いてしまう。そんな曲ですね。

 

アフロ・キューバンとはキューバの音楽です。

今ではサルサなどキューバ音楽はメジャーな音楽ですが当時はそうではありませんでした。しかしディジー・ガレスビーらがキューバ音楽とジャズを融合した音楽を演奏し始めたのをきっかけにアフロ・キューバン・ジャズが爆発的に流行します。

ちなみにアフロというのはアフリカ色が強いという意味です。

キューバ音楽は元々キューバに住んでいた原住民とヨーロッパからやって来てキューバを征服したスペイン人と奴隷として連れてこられたアフリカ人との3種類の血が混じって出来上がった音楽です。

そんなキューバ音楽の中でも特にアフリカ色が強い音楽をアフロキューバンといいます。

アフリカはリズムの宝庫です。さまざまな太鼓や打楽器を操ってさまざまなリズムを創造します。まさに魂のリズムといいますか熱いリズムですね。アフリカ色が強いということはそういう熱いリズムを全面に出した音楽ということです。

50年代・60年代のジャズミュージシャンの大半は黒人でしたから、みんなこのアフロキューバンの音楽に血が騒いだのではないかと思います。

 

このアルバムが録音された1955年はアート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズが結成されてまもなくの頃です。

このアルバムのリーダであるケニー・ドーハムはそのメンバーでした。そしてザ・ジャズ・メッセンジャーズのリーダーであるドラムのアート・ブレイキーとピアニストで音楽監督でもあったのホーレス・シルバーとそしてやはりメッセンジャーズのメンバーであったテナー・サックスのハンク・モブレーもこのアルバムに参加しています。

というかこのアルバムはほとんどアート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズのアルバムといっても過言ではないでしょう。おそらくアート・ブレイキーがすべてを仕切っていたんじゃないかなと思います。勝手な推測ですけど、遠くはずれてはいないと思います。

 

全8曲(9曲目はオルタネイト)の内の7曲がケニー・ドーハムのオリジナルで4曲目のBasheer's Dreamだけがジジ・クライスの曲です。

1曲目から4曲目はラテン・テイストの曲で5曲目から8曲目はジャズです。

アナログLPの時にはA面がラテンでB面がジャズという分け方でした。

 

どの曲も素晴らしいですが特にやはり1曲目のAfrodisiaが1番でしょうか。

ラテンのリズムとジャズのリズムが交互に出てくる構成が興奮を煽ります。

ケニー・ドーハム(Tp) 〜 ハンク・モブレー(T.Sax) 〜 ジェイ・ジェイ・ジョンソン(T.b)のクールなアドリブソロも完璧です。

前面に出てくるコンガが超かっこいいし最後のカルロス・バルデス(Conga)とアート・ブレーキー(Drum)の掛け合いも手に汗にぎります。

 

まさにこのアルバムは元気の出る至極のジャズ名盤の一枚といえるでしょう。

 

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曲目

1. Afrodisia
2. Lotus Flower
3. Minor's Holiday
4. Basheer's Dream
5. K.D.'s Motion
6. La Villa
7. Venita's Dance
8. Echo Of Spring (AKA K.D.'s Cab Ride)
9. Minor's Holiday (Alternate Take)

 

[ Recording 1955 Blue Note ]

Kenny Dorham (Trumpet )

Hank Mobley (T. Sax )

J.J. Johnson (Trombone )(track 1 ~ 4, 9)

Cecil Payne (B. Sax )

Horace Silver (Piano )

Oscar Pettiford  (Bass) (track 1 ~ 4, 9)

Percy Heath  (Bass) (track 5 ~ 8)

Art Blakey (Drum )

Carlos "Patato" Valdes (Congas ) (track 1 ~ 4, 9)

Richie Goldberg  (Cowbell ) (track 1 ~ 4, 9)

 

最後まで読んでいただきありがとうございました!

"Horace Silver and spotlight on drums: Art Blakey - Sabu / Horace Silver Trio

ぴったり息のあったホーレス・シルバーとアート・ブレイキーの名演が聴けます


ホレス・シルヴァー・トリオ&アート・ブレイキー、サブー+4

ホーレス・シルバー(Piano)とアート・ブレイキー(Drum)は1952年から約4年の間とても親しく共演しました。

1954年にはビバップの歴史に残る名演「 A NIGHT AT BIRDLAND(バードランドの夜)」というアルバムを残しています。このアルバムにはクリフォード・ブラウン(Tp)も参加していています。ビバップの夜明けと言われジャズを語る上でもとても貴重なアルバムです。

また同1954年には2人でザ・ジャズ・メッセンジャーズを結成しました。

一応リーダーはアート・ブレイキーでしたが、実質的にはホーレス・シルバーとの双頭バンドでした。

ザ・ジャズ・メッセンジャーを結成してからは数々の名盤アルバムも残しています。

そして1956年にホーレス・シルバーはザ・ジャズ・メッセンジャーを脱退します。

理由は誰にもわかりませんがこの2人のジャズの巨人はケンカ別れしてしまいます。

ホーレス・シルバーがザ・ジャズ・メッセンジャーズを脱退するにあたり2つの不思議な条約を交わします。

それは

① "The Jazz Messengers"というバンドの名前はアート・ブレイキーが持って行く。

②バンドのメンバーはホーレス・シルバーが連れて行く。

というわけで、ザ・ジャズ・メッセンジャーを脱退した後はメンバーをそのまま引き連れて"ホーレス・シルバー・バンドとして活動を始めます。

一方、アート・ブレイキーは実態のない名前だけのバンドを立て直すべく悪戦苦闘し、しばらくは暗黒時代といわれる時を過ごすことになりますがその話はまた別の機会に。

 

このようなホーレス・シルバーとアート・ブレイキーの2人の関係を思いながら聴いた時にこのアルバムは非常に感慨深いものになります。

この2人がケンカ別れしないでずっと仲良くやっていたらどんな音楽が出来ていたのか聴いてみたかったなぁ、なんて。

 

このアルバムは2人が出会って間もない頃の作品です。まだザ・ジャズ・メッセンジャーズを結成する前です。

2人が楽しそうにプレイする様子が手に取るようにわかります。やっと分かり合える相棒と巡り合えてよほど嬉しかったんじゃないかな?なんて勝手に思ってしまうくらいご機嫌な2人です。

 

アルバムタイトルは" "Horace Silver and spotlight on drums: Art Blakey - Sabu / Horace Silver Trio"となっています。

”ホーレス・シルバーのリーダーアルバムですが、1番の注目はアート・ブレイキーのドラムとサブ(コンガ)ですよ!”

と何とも奇妙なタイトルです。

しかも12曲目のMessage From Kenyaではアート・ブレイキー(ドラム)とサブ(コンガ)が延々と(4分34秒!)打楽器だけの演奏をやっています。あまり聞こえませんがベースが参加しています。しかしホーレス・シルバー(ピアノ)は参加していません。

もっとすごいのは14曲目Nothing But The Soulではアート・ブレイキーの完全ドラム・ソロです。これも4分強の長さです。

どういういきさつでこうなったのかわかりませんがちょっとありえない選曲ですよね。

おそらくホーレス・シルバーもブルーノートの代表のアルフレッド・ライオンもそれだけアート・ブレイキーをリスペクトしていたということだと思います。

それは15曲目Buhainaがアート・ブレイキーイスラム教の戒名だということにも表われていると思います。

よく聴いていただければわかりますがほんとうにアート・ブレイキーは凄い!ドラムだけでこれだけ聴かせてくれる人はそうはいないと思います。

バディ・リッチも凄いけどこんなに暖かく包み込んでくれるドラムではないように思います。

 

と、このアルバムはホーレス・シルバーのリーダーアルバムなのにアート・ブレイキーばかりを絶賛してしまう奇妙なアルバムです。

 

といってもやはりホーレス・シルバーは素晴らしいです。

ピアノのプレイはもちろん素晴らしいし曲もご機嫌だしアレンジがこれまた最高です。

全12曲のうち9曲がホーレス・シルバーのオリジナルです(Track1.2.5.6.7.8.11.13.15)。

どの曲も素晴らしく心に残る名曲ですが私は特に1曲目のSafariと13曲目のOpus De Funkがお気に入りです。

Opus De Funkは アート・ペッパーの「Art Pepper + Eleven」というアルバムでも演奏していてとてもかっこいいです。そちらもぜひ聴いてみてください。 

 

このアルバムはまさに元気の出る至極のジャズ名盤です! 

 

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曲目

1. Safari
2. Ecaroh
3. Prelude To A Kiss
4. Thou Swell
5. Quicksilver
6. Horoscope
7. Yeah
8. Knowledge Box
9. How About You
10. I Remember You
11. Silverware
12. Message From Kenya
13. Opus De Funk
14. Nothing But The Soul
15. Buhaina
16. Day In Day Out

 

[ Recording 1952 & 1953  Blue Note ]

 

演奏メンバー

Horace Silver (Piano)

Curly Russell (Bass)

Gene Ramey (Bass)

Percy Heath (Bass)
Sabu (Congas)
Art Blakey (Drums)

 

最後まで読んでいただきありがとうございました。

Fuego / Donald Byrd

これぞファンキー・ジャズ!ドナルド・バード会心の一枚

Fuego by Donald Byrd

 

ブルーノートらしいカッコいいクールなジャケットです。

タイトルの「Fuego(フュエゴ)」はスペイン語で「火」の意味だそうです。

確かに火が燃えるように激しい演奏がくり広げられるこのアルバムを的確にあらわしているジャケットですね。

ドナルド・バードが頬杖をついている、何か企んでいるようなポーズも意味深で素敵です。

 

オリジナル・ライナーノートによるとこのアルバムではドナルド・バードはBbのピッコロ・トランペットを吹いているそうですが。本当かな?

「他のアルバムと聴き比べてみるとよくわかる」とも書いてありますが、私には普通のトランペットに聴こえます。

 

ドナルド・バードは牧師の子として生まれましたのでゴスペル音楽には小さい頃から慣れ親しんでいたんでしょうね。

このアルバムにもゴスペルの香りが漂います。

特に6曲目の題名Amen(エーメン)は教会で繰り返される言葉ですね。まさにゴスペルてす。

 

2曲目Bup A Loop。躍動感溢れるテーマと疾走感あるアドリブのタイム感がたまりません。暖かい音色とゆったりとしたバードのトランペットが素晴らしい。

 

3曲目Funky Mama。ジャッキー・マクリーンのどっしりと安定したブルージーなソロがたまりません。デューク・ピアソンのピアノも冴えています。

 

4曲目Low Life。バードの甘くて太い音色がやはり素晴らしくよく歌っています。切り込み隊長のようなキレキレのレックス・ハンフリーのドラムが超かっこいいです。

 

5曲目Lament。やはりこの曲が1番好きです。

同名の曲でJJ.JohnsonのLamentもありますが、全然違う曲です。ジェイ・ジェイ・ジョンソンの方は綺麗なバラードですがこちらのドナルド・バードの方は哀愁溢れるファンキー・ジャズですね。

Lamentとは哀歌という意味だそうですが、確かに何かもの悲しい感じのする曲です。もの悲しいんだけど何か賑やかな感じもする、心の琴線に触れる曲です。

やっぱりいい曲だなぁ。

これぞファンキー・ジャズです。

 

まさにこのアルバムは元気の出る究極のジャズ名盤の一枚です。

 

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曲目

1. Fuego
2. Bup A Loop
3. Funky Mama
4. Low Life
5. Lament
6. Amen

 

[ Recording 1959年 Blue Note ]

 

演奏メンバー

Donald Byrd (tp)

Jackie McLean (as)

Duke Pearson (p)

Doug Watkins (b)

Lex Humphries (ds)

 

最後まで読んでいただきありがとうございました!

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DJANGO / The Modern Jazz Quartet

室内楽的クラシック的なクールジャズが楽しめます


Django

バンド名は通称「MJQ」正式には「The Modern Jazz Quartet」です。

元々ピアノのジョン・ルイスビブラフォンミルト・ジャクソンとドラムのケニー・クラークはディジー・ガレスビーのビックバンドで一緒でした。

1951年、最初はミルト・ジャクソンをリーダーとした「ミルト・ジャクソン・カルテット」というバンドから始まりました。

そして1952年に「ザ・モダン・ジャズ・カルテット」と名前を変えて再出発します。

どちらも頭文字をとって「MJQ」ですね。

 

ミルト・ジャクソン・カルテット」の頃はビバップ・ジャズ色のもっと強いバンドでした。ピアノのジョン・ルイスがリーダーシップを取るようになり「ザ・モダン・ジャズ・カルテット」と名前を変えてからはビバップ・ジャズにクラシック色の強い演奏も組み込まれるようになりました。

ジョン・ルイスクラシック音楽の研究を熱心にしていたようです。そしてジャズの中にクラシックの要素を組み込むことをつねに思索していたようで、その思いが実現し開花したのがこのアルバムということになります。

1954年から1956年にかけて3回のレコーディングによってこのアルバムは完成します。MJQの集大成といえますね。

 

1曲目のDjangoは偉大なギタリストであるジャンゴ・ラインハルトへの追悼の思いからジョン・ルイスが作った曲です。

荘厳な中に美しい情景がにじみ出ている素敵な曲です。

 

2曲目のOne Bass Hitはベースのパーシー・ヒースをフィーチャした曲です。

ベースのオスカー・ペティフォードがディジー・ガレスビー楽団にいる時に作ったのではないかと思われますが、クレジットはガレスビーとペティフォードの共作となっています。ガレスビーが少しアドバイスしたんでしょうね。

縦横無尽に弾きまくるパーシー・ヒースのベースが堪能できます。

曲目のワン・ベース・ヒットは野球のシングル・ヒットにかけ合わせたシャレでしょうか。野球の方は英語で書くとOne Base Hitで微妙に一文字違いですね。

 

3曲目は La Ronde Suite(ロンド組曲)。

この曲は4楽章からなっています。まさにクラシック的な発想ですね。

 

まずピアノのジョン・ルイスをフィーチャーした第一楽章。

ジョン・ルイスはクラシックが好きだったかもしれませんがやはり根っからのジャズマンです、気持ちよくスイングしています。

 

そしてベースのパーシー・ヒースをフィーチャした第二楽章。

第一楽章から少しテンポも遅くなり落ち着いた見事なアドリブソロを聴かせてくれます。

しかしパーシー・ヒースのベースはよく歌っています、素晴らしい。

 

第三楽章はビブラフォンミルト・ジャクソンのフィーチャです。

次から次からフレーズが流れるように飛び出してきます。ミルト・ジャクソンのバイブを聴くと何とも言えない楽しい気持ちになれます。

 

そしてクライマックスは第四楽章のケニー・クラークのドラムフィーチャです。

何とも豪快なドラムソロを聴かせてくれます。

ケニー・クラークはこの録音の後すぐに退団してパリに永住します。

 

このアルバムは全体にジャジーでブルージーな部分と18世紀ごろの宮廷音楽のようなクラシック音楽の部分が心地よく融合していて不思議な気持ちになれます。

 

7曲目のBut Not for Meのような聞き慣れたジャズのスタンダード曲でもジョン・ルイスの手にかかればクラシックの室内楽のようになります。しかしそこにミルト・ジャクソンのバイブが入ってくるといきなりジャジーになり、ほんの少しドラムソロを挟むだけでまさにビバップ・ジャズになります。魔法のようです。

 

まさにこのアルバムは元気の出る至極のジャズ名盤の一枚といえます。

 

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曲目

1. Django
2. One Bass Hit
3. La Ronde Suite: A: Piano/B: Bass/C: Vibes/D: Drums
4. Queen's Fancy
5. Delaunay's Dilemma
6. Autumn in New York
7. But Not for Me
8. Milano

 

[ Recording

1953年 (track 4〜7)

1954年 (track 1.2.8)

1955年 (track 3)

Prestige  Record]

 

演奏メンバー

John Lewis (Piano )
Milt Jackson (Vib)
Percy Heath (Bass)
Kenny Clarke (Drum)

 

最後まで読んでくださってありがとうございました!

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