The Bud Powell Trio「バド・パウエルの芸術」 / Bud Powell Trio

ピアノの神様バド・パウエルの教科書的アルバムです


バド・パウエルの芸術

邦題は「バド・パウエルの芸術」

前半1曲目〜8曲目はバド・パウエル22歳の若さでレコーディングした曲。

後半9曲目〜16曲目はバド・パウエル28歳のほんの少し円熟した演奏です。

アナログLPレコードの時にはA面が前半の22歳の時、B面が後半の28歳の時という風になっていました。

6年の歳月を経たバド・パウエルの変化の歴史を物語るようなアルバムですね。

 

前半1曲目〜8曲目は1947年にレコーディングされたバド・パウエル初リーダー録音です。何故か録音してからしばらく経ってから発売されたようです。

そして9曲目〜16曲目は1953年の録音です。この録音を発売する時のタイミングで先の1947年の初リーダー録音の音源をくっつけて発売したようです。

 

1947年のバド・パウエルと1953年のバド・パウエルを聴き比べてみると6年間でかなり変化していることに気がつきます。

前半の22歳の時のプレイは若くてキレキレでパワフルです。ちなみにピアニスト的にはこの録音がビバップ・ピアノの教科書とされているようです。録音スタジオ等の違いやメンバーの違いが関係しているのかもしれませんがやはりこちらの録音の方が音の迫力と勢いがあるように思います。

 

それと比べて後半の28歳の時のプレイは少し落ち着いた余裕のある演奏に感じます。

前半の若い時の演奏には音を楽しむという感じはあまりなくてただただ理想の音に近づけるために突き進んでいるように聴こえますが、後半の少し歳をとった時の演奏は、力の抜き加減がわかってきたというか音を楽しんでいるように聴こえます。

これはどちらがいいとかいうことではなくて好みの問題でしょうが、私はどちらの演奏も感慨深く楽しめます。

 

ただおそらく事はそう単純ではないかもしれません。当時バド・パウエルは麻薬所持の濡れ衣を着せられて警官に頭をひどく殴打された後遺症で頭痛と神経障害にかなり苦しめられていたそうです。その痛みを和らげるために麻薬やアルコールの中毒になってしまって最悪の日々をおくります。今では考えられませんが、神経障害の治療に電気ショック治療をされたりとか大変な目にあったようです。

そういう事が原因で演奏にも良い時と悪い時の差が激しく現れるようになります。

22歳の演奏と28歳の演奏の違いはそういう身体の問題と関係があるのかもしれませんね。

バド・パウエルの演奏を紐解くにあたってはこの事も重要な鍵になるのです。

 

バド・パウエルは自分の身体の不調を克服する為や、もしかしたら身体の不調を忘れる為にピアノにのめり込んでいったのかもしれません。

 

バド・パウエルの演奏からはいつも何かと闘っているような音が聞こえてくるような気がしてなりません。

そしてもしかしたらその闘志がバド・パウエルを天才たらしめる動力なのかもしれません。

 

バド・パウエルの話になるとどうも熱くなってしまいます。

 

このアルバムはまさしく元気の出るジャズの名盤の一枚といえます!

 

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曲目

1. I'll Remember April
2. Indiana
3. Somebody Loves Me
4. I Should Care
5. Bud's Bubble
6. Off Minor
7. Nice Work If You Can Get It
8. Everything Happens To Me
9. Embraceable You
10. Burt Covers Bud
11. My Heart Stood Still
12. You'd Be So Nice To Come Home To
13. Bag's Groove
14. My Devotion
15. Stella By Starlight
16. Woody 'N You

 

[ Recording 1947(1〜8)&1953 (9〜16)]

 

演奏メンバー

Bud Powell (Piano)

Curly Russell ( Bass)  (track 1〜8)

George Duvivier (Bass)  (track 9〜16)

Max Roach (Drum)  (track 1〜8)
Art Taylor (Drum)  (track 9〜16)

 

最後まで読んでいただいてありがとうございます。

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