Mack The Knife - Ella In Berlin / Ella Fitzgerald

1万2000人の観衆の前でうろ覚えの曲を歌ってしかも大盛り上がりのエラ・フィッツジェラルドの凄いアルバム


Mack the Knife-Ella in Berlin

1960年の2月にドイツの西ベルリンで行われた1万2000人が集まったコンサートのライブアルバムです。

題名が「Mack The Knife」となっているのはこの曲がこのアルバムの中でとても素晴らしいパフォーマンスだからですが、おそらくはもう少し違った意味でこの「Mack The Knife」という曲にちょっとしたエピソードがあるからです。

 

1935年生まれのエラ・フィッツジェラルドは18歳の時から歌手活動を始めていましたから、このアルバム「マック・ザ・ナイフ」が発売された1960年はもう43歳のベテラン歌手。人気も実力もピカイチでした。

デビュー同時からツアーに録音にと大忙しだったエラ・フィッツジェラルドはこの西ベルリン・コンサートもツアーのまっさかかりでした。

前日のベルギー・コンサートを終えたバンド一行は不眠の移動をしてこの西ベルリンコンサートに臨みました。

エラ・フィッツジェラルドとバンドはリハーサルもなくステージの幕は開きます。

どの歌手もたいがいはそうですがツアーに入るとレパートリーはほぼ変わりなく毎回同じ曲を同じように演奏するのが常です。毎日毎日が移動して演奏また移動して演奏の繰り返しですからリハーサルをしている時間もありませんので。

 

しかしその日は違いました。エラ・フィッツジェラルドはステージの途中で突然「マック・ザ・ナイフをやるわ」とバンドに言います。「マック・ザ・ナイフ」という曲はボビー・ダーリンやルイ・アームストロングが歌っていて、当時はすでに大流行していましたからバンドのみんなは知ってはいましたがエラ・フィッツジェラルドのバンドで演奏するのは初めてでした。それでもさすがに一流バンドです。何くわぬ顔で曲が始まります。

しかし肝心のエラ・フィッツジェラルドは何と「マック・ザ・ナイフ」歌ったことがなく歌詞もうろ覚えでした。

 

アルバムを聴けばわかりますが、曲が始まる直前のMCで

”We'd like to try and do it for you.
We hope we remember all the words."

「どうしてもみんなに聞いて欲しいの、

でも歌詞を全部覚えてるかなぁ?」

なんて前置きしてから歌います。さすがベテランさんです。

 

案の定4コーラス目あたりから歌詞が崩壊していきます(笑)

5コーラス目になるともうこんな感じの歌詞になってしまいます

"Oh, what's the next chorus?
To this song, now
This is the one, now
I don't know"

「エーと、次のコーラスの歌詞なんだっけ?

この歌のことだけど、

あー、もうわかんなくなっちゃった」

なんて歌にしちゃいます。さすがです!

 

もうあとは歌詞のないスキャット

”Oh bobby darin, and louis armstrong
They made a record, oh but they did
And now ella, ella, and her fellas
Were making a wreck, what a wreck
Of mack the knife”

「ボビー・ダーリンとルイ・アームストロングはこの曲で記録(グラミー賞)を取ったのに、

私(エラ・フィッツジェラルド)ったらマック・ザ・ナイフに撃沈 」

みたいな歌詞がすらすらと出て来ます。

 

マック・ザ・ナイフ」はドイツ人作家のブレヒトが書いオペラに出てくる登場人物「マッキー」の愛称。

 

エラ・フィッツジェラルドの歌のなかでは"ボビー・ダーリン"と"ルイ・アームストロング"と"マッキー"とそれからこのコンサートホールのある町"ベルリン・タウン"とがスキャットの合間にちりばめられてもうそれは大変なことになります。

 

これがエラ・フィッツジェラルドが初めて「マック・ザ・ナイフ」を歌った時の顛末ですが、これがお客さんにウケて、またエラ・フィッツジェラルド自身も気に入ってしまったのか、その後のコンサートでは必ず歌う十八番の曲にありました。

 

必ず歌うのですがそこはエラ・フィッツジェラルド、歌詞も必ず変わります。

しかもルイ・アームストロングのモノマネで歌ったりともうやりたい放題。

面白いですね〜!さすがです!

 

ぜひ聴いてみてください!

 

このアルバムはまさに元気が出る珠玉のジャズ名盤です。

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曲目
1. That Old Black Magic
2. Our Love Is Here to Stay
3. Gone with the Wind
4. Misty
5.The Lady Is a TrampThe Man I Love
6. Summertime
7. Too Darn Hot
8. Lorelei
9. Mack the Knife
10. How High the Moon?
11. Lover Come Back to Me
12. Angel Eyes
13. I'm Beginning to See the Light
14. My Heart Belongs to Daddy
15. Just One of Those Things
16. I Can't Give You Anything But Love
17. Sophisticated Lady
18. Love for Sale
19. Just One of Those Things

 

[ Recording 1960年 Verve Record ]

 

演奏メンバー

Ella Fitzgerald (Vocal)

Paul Smith (Piano)

Jim Hall (Guitar)

Wilfred Middlebrooks (Bass)

Gus johnson (Drum)

 

最後まで読んでいただきありがとうございました!

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