FOUR & MORE / Miles Davis
マイルス・デイビスが自画自賛する興奮の名盤
1963年にマイルス・デイビスのバンドからウィントン・ケリー(ピアノ)、ポール・チェンバース(ベース)、ジミー・コブ(ドラム)が脱退して、マイルス・デイビスは新メンバーを探さなくてはいけなくなりました。
まずジョージ・コールマン(テナーサックス)をジョン・コルトレーンの紹介で加入させます。
次に当時アート・ファーマー(トランペット)のバンドにいたロン・カーター(ベース)を引き入れます。
そして当時ジャッキー・マクリーン(アルトサックス)のバンドにいたトニー・ウィリアムス(ドラム)を引き入れます。
最後に当時ドナルド・バード(トランペット)のバンドにいたハービー・ハンコック(ピアノ)を引き入れてとりあえずのバンド完成となりました。
とりあえずのというのは、後にジョージ・コールマンの代りにウェイン・ショーター(テナーサックス)が加入して"マイルス・デイビス黄金のクインテット"が完成するからです。
マイルス・デイビスの自叙伝によると、トニー・ウィリアムスのドラムを初めて聞いた時の印象をこう書いています。
「ジャッキー・マクリーンと一緒にやっていたこの17歳の小さなドラマーを聴いて、その素晴らしさに一発でまいってしまった。ものすごい奴だと思った。(中略)オレはこの大したチビを聴いただけで、たまらなく興奮してきたのがわかった。トランペッターというのは、すばらしいドラマーと演奏するのが大好きだが、オレは奴を聴いた途端、その場でこいつはドラマーの中でもとびきりのミュージシャンになると確信した」
そしてマイルスはハービー・ハンコックとトニー・ウィリアムスとロン・カーターを自宅に呼んで地下のスタジオで演奏させます。
自叙伝によると、
「三人はやって来て、その後の数日間、毎日演奏した。オレは、ミュージック・ルームや家中に巡らせたインターコムを通じて、ずっと聴いていた。彼らのサウンドは、もう良すぎるくらいだった。3日目か4日目にオレも下に降りていって、一緒にほんの少しだけ演奏した。(中略)新しいクインテットは、ものすごいバンドになるという自信がオレにはあった。彼らはほんの2、3日間であれだけすごくなったんだから、2、3ヶ月後にはどうなっているんだろうかと、こみ上げてくる興奮があった。それはオレがしばらく忘れていた感覚だった。素晴らしい、ものすごい音楽が聞こえて来るようだった」
そしてそのバンドでのライブ録音のアルバムがこの「FOUR & MORE」です。
1964年2月にフィルハーモニック・ホールで行われた慈善コンサートでのライブレコーディングです。
自叙伝にはこのコンサートのことがこう書いてあります。
「その夜の演奏は、まさに天井をぶっ飛ばしてしまいそうな勢いだった。みんなが、本当に一人残らず全員が、ものすごい演奏をした。曲はほとんどアップ・テンポだったが、ただの一度も狂わなかった。ジョージ・コールマンも、この夜が最高だった。それに、バンドには創造的な緊張感がみなぎっていた」
コロンビア・レコードはこの日のフィルハーモニック・ホールでのコンサートを2つに分けてアルバムにしました。1つはこの「Four & More」でもう1つは「My Funny Valentine」です。
「Four & More」の方は刺激的な曲を集めて作ったアルバムで「My Funny Valentine」の方は少しリラックスした曲を集めて作ったアルバムといえましょうか。
どちらも素晴らしく勢いとスピード感のあるビートと変幻自在なリズムと絶妙な音使いが凄いです。
ぜひ聴いてみてください。
曲目
1. So What
2. Walkin’
3. Joshua
4. Four
5. Seven Steps To Heaven
6. There Is No Greater Love
[ Recording 1964年 Philharmonic Hall
Columbia Record]
演奏メンバー
Miles Davis (Trumpet)
George Coleman (T.Sax)
Herbie Hancock (Piano)
Ron Carter (Bass)
Tony Williams (Drum)
このアルバムはまさに元気の出る究極のジャズ名盤といえます。
最後まで読んでいただいてありがとうございました。